トレチノイン・ハイドロキノン療法の反応について

ハイドロキノン・トレチノイン療法は、美白作用のある外用薬「ハイドロキノン」と、皮膚のターンオーバーを促進・調整する「トレチノイン」を併用する治療法で、比較的古くから行われてきました。

日本の美容医療領域では、東京大学の吉村先生が熱心に研究を進められたことをきっかけに広く普及し、同時期にアメリカのDr.オバジが開発したトレチノイン・ハイドロキノン療法のシステムも日本に導入されました。

しかし現在、Dr.オバジ自身はこの療法から離れ、別のアプローチへとシフトしています。当院でも、オバジシステムの取り扱いはすでに終了しております。

ハイドロキノン療法は医師の適切な管理が不可欠であり、専門的なサポートがない場合にトラブルが生じるケースも少なくありません。そのため、「すべての人に確実に良い結果をもたらす」という当初のDr.オバジの主張は、現在では見直されつつあります。

それでも、的確な管理と十分な観察のもとであれば、ハイドロキノン・トレチノイン療法は非常に優れた治療法です。当院では、短期間で集中的に行う治療法を基本としながら、多くの患者様に良好な結果を得ていただいております。なお、一部の患者様には長期的な継続治療を行っているケースもあります。

治療中の肌反応の判断は、豊富な臨床経験に基づいて行われるものであり、長年の治療を通じて得られた知見が非常に役立っています。

どのような高効果な治療であっても、副作用のリスクはつきものです。しかし、正しい使用方法と医師の指導のもとで行えば、高い効果が期待できます

また、メンテナンス期にはハイドロキノンを含まない製品に切り替えることで、効果の維持と肌の安定化を図ることが可能です。

現在当院では、オバジシステムに代わり、Dr.フェルナンデスによる「エンビロン」シリーズを導入しています。エンビロンは長い歴史と実績があり、高い効果を誇ります。実際、Dr.フェルナンデスは長年にわたりビタミンA療法を研究・実践してきた先駆者であり、結果的にDr.オバジもビタミンA療法へと回帰したことからも、フェルナンデス式のアプローチに軍配が上がったと言えるでしょう

HQRA開始前
HQRA塗布3ヵ月後

よくある質問

お渡ししている説明用紙にて、治療の基本的な内容は概ねご確認いただけるかと思いますが、用紙には収まりきらなかった補足事項や、よくいただくご質問については、こちらにQ&A形式でまとめておりますので、ぜひご参考になさってください。

なお、ブライセルシリーズをベースにご使用いただくことで、肌反応がムラなく均一に現れ、より美しい仕上がりが期待できます

Q1 痛みが強くて我慢できません。

A:痛みが強い場合は、無理をせず塗布量を減らしていただいて構いません。皮むけやヒリヒリ感は治療による正常な反応です。

反応が強すぎて途中で治療を断念するよりも、適切に調整しながら継続することで、より高い効果が得られます

対処法としては、以下のいずれかの方法をおすすめします:
我慢できる範囲で塗布量を減らしつつ、様子を見ながら調整を続ける
一旦塗布を中止し、3〜4日ほど休止すると反応が落ち着くので、その後少量から再開し、肌の様子を見ながら徐々に量を増やしていく

ご自身の肌の状態に合わせて、無理のない範囲で調整してください。

Q2 皮膚がボロボロでお化粧が出来ません。

A:皮むけが強い場合は、無理をせず塗布量を減らしていただいて構いません。皮がむけるのは治療による正常な反応ですので、ご安心ください。

治療中は、無理にファンデーションを使用せず、日焼け止めとポイントメイクのみで過ごしていただくのがおすすめです。どうしてもファンデーションを使いたい場合は、リキッドタイプやBBクリームなど、肌に密着しやすいものを選ぶと目立ちにくくなります。逆に、パウダータイプは皮むけが強調されてしまうことがあるため、避けたほうがよいでしょう。

反応は時間とともに徐々に落ち着いてきますので、過度に心配せず、そのまま治療を継続してください

なお、大きなイベントなどがある場合は、イベントの4〜5日前から塗布を中止していただくと、肌の反応がおさまりやすくなります。適宜調整しながら進めていきましょう。

Q3 塗り始めて1週間で、反応が強く出ていますが、いつまでこの状態ですか?

A:反応のピークは、塗り始めてから1〜2週間頃に現れます。その後は徐々に落ち着き始め、約1ヵ月半ほどで皮むけなどの反応は和らいでいきます

その後も多少の変動はありますが、濃度を上げたり、半年以上の長期中断をしない限り、初期のように強く剥けることはほとんどありません

肌が治療に慣れてくることで、反応もコントロールしやすくなっていきますので、安心して継続していただければと思います。

Q4 いつまで続ければいいですか?

A:通常、約4ヵ月半が1クールとなります。この期間中に、皮膚は約3回生まれ変わると言われています。ハイドロキノン・トレチノイン療法との相性が非常に良い方(全体の10〜15%程度)では、そのまま継続していただくことも可能ですが、通常は1クール終了後、ブライセルシリーズまたはエンビロンシリーズに切り替えてメンテナンスしていく方法がより安全です。

Q5 ハイドロキノン・トレチノイン療法を再開したいのですが、休薬はどのくらい必要ですか?

A:明確な休薬期間の決まりはありませんが、2回目以降の再開は冬の時期がおすすめです。冬は反応や効果が出やすく、肌への負担も比較的少ないためです。夏の間はブライセルやエンビロンで肌を整え、冬に再開すると良いでしょう。
たとえば、11月に再開して翌年3月末まで塗布することで、ちょうど1クール(約4ヵ月)となります。なお、初回は夏でも十分反応が出ますので、季節にこだわる必要はありません。

Q6 最近、まったく剥けなくなってきました。効果はありますか?

A:まったく効果がないわけではありませんが、皮むけがあるほうが視覚的に効果を実感しやすいのは確かです。必要に応じて、塗布量を増やすか、濃度を上げることを検討してみてください。基本の塗布量はハイドロキノンとトレチノインをそれぞれ「大豆粒大」ずつ混ぜることです。反応が強く出すぎる場合は、量を減らして調整してください。

Q7 ハイドロキノンが合わないというのはどういう状態ですか?

A:まれにハイドロキノンに対するアレルギー反応を示す方がいらっしゃいます。明らかなアレルギーでは、皮膚が真っ赤になることもありますが、多くはモヤモヤと黒ずむような色素沈着が見られる形で現れます。赤みはトレチノインの反応と見分けがつきにくい場合もありますが、黒ずみが拡大するようであれば、ハイドロキノンが合っていない可能性が高いです。
その場合は、N10セラムやエンビロンシリーズへの切り替えをおすすめしています。実際、ハイドロキノンからエンビロンに変更することで黒ずみが改善したケースも多くあります。

ただし、一時的なモヤモヤはトレチノインの刺激による色素沈着の可能性もあり、継続することで自然に薄くなっていくこともあります。判断が難しい場合は、必ず医師にご相談ください。

Q8 妊娠しましたが、治療は続けても大丈夫ですか?

A:トレチノイン(ビタミンA誘導体)は、経皮吸収が少ないとされていますが、妊娠中は禁忌とされています。安全性を最優先に考え、必ず治療を中止してください
(※経験上、大きな問題が起きたという報告はほとんどありませんが、大切なお子さまのためにも使用は控えてください。)

Q9 授乳中ですが使用できますか?

A理論上は使用可能ですが、お子さんと顔を寄せ合うことも多く、薬剤が赤ちゃんの肌に触れる可能性があるため、使用はお控えいただくのが安心です。万が一、お子さんの肌にトレチノインやハイドロキノンが付着すると、赤みや炎症の原因になることがあります。

Q10 ブライセルシリーズは必須ですか?

A必須ではありませんが、併用を強くおすすめしています。最近では、治療反応を安定させる“プライマー”としてブライセルを併用する医療機関も増えています。実際、併用することで肌の反応がより均一になり、治療効果が出やすくなる傾向があるのも事実です
できるだけ早く、かつ安定した結果を目指すためには、ご使用いただくのが理想的です。

Q11 首に塗ってしまって、とてもかゆくなってしまいました。どうしたらいいですか?

A:首への塗布は肌が敏感な部位のため、上級者向けとされています。慣れるまでは、首には塗らないようご注意ください。また、就寝中に髪の毛が首や顔に触れることで薬剤が広がり、かぶれの原因になることもあります。髪はできるだけまとめて、肌に触れないように工夫してください。
症状がひどい場合は、軽めのステロイドローションもご用意していますので、ご来院のうえご相談ください
慣れてから少しずつ首への塗布を始めると、首のシワやくすみにも効果が期待できますが、反応が出やすい方もいらっしゃいますので、無理のない範囲で慎重に進めてください